■はちきん椎茸
むっちりと肉厚で、しっかりとしたうまみと芳醇な香り。どっしりと風格のある佇まいを見せる椎茸は、その名も「はちきん椎茸」。「はちきん」とは、快活でたくましく、男勝りで豪快な土佐の女性を表す言葉です。男勝りなイメージとはほど遠い園主の山﨑桃子さんによると、「女性が作った椎茸、という意味を込めました」とのこと。女性らしい繊細な気配り、目配りがこのおいしい椎茸を育てています。
山﨑さんが椎茸栽培に着手したのは3年前のこと。ご主人の祖母が離農してからそのままになっていた畑とビニールハウスを、「このまま荒らしておくのはもったいない」と夫婦で活用を模索しました。農業の経験はまるでなかったものの、「女性だけでできる作物を」と考え、桃子さんが園主となって菌床椎茸に乗り出しました。
最初は小さな納屋に家庭用エアコンを設置し、900床のテスト栽培からスタートしました。温度管理が難しく、寒さから菌がうまく育たず、菌床が腐敗し収穫はほとんどありませんでした。
その失敗をもとに、2年目からはビニールハウスを整備し、加温機を入れて本格栽培を開始しました。3年目は、6000床の椎茸を栽培しています。
5月にビニールに包まれた菌床を仕入れてから、8月半ばまでは菌を熟成させる期間。お盆頃にビニールを開けて、水やりなどのお世話をするうちに、10月中旬頃から椎茸がひょひょこと生え始めます。「なかなか生えてこないなぁ」と感じるものは、菌床をぽんぽんと叩くと、菌が目覚めてにょきっと顔を出します。「その叩き方が難しくて。強すぎると一気にわっと生えてきて、形がいびつになったり、小さいものしか育たなかったりするんです」と山﨑さん。ストレスを与えずに、自然のままにのびのび育てると、立派な大物に育つのだそうです。一つ一つ状態を確認しながら育ちを見守り、まだかと気にかけ、思わずほれほれと手をかけるところは、「子育てと似ています」と山﨑さん。愛情込めて育てています。
「水をギリギリまで切って、表面がカラッとした持ちのいい椎茸に仕上げています」と品質にもこだわる、食べ応え満点の椎茸です。